AI技術の進化に伴い、音声生成や編集におけるニーズが急増しています。特に、RVC(AIボイスチェンジャー)を使った音声加工は多くのクリエイターに人気です。しかし、音質の向上やノイズ除去には追加のツールが必要です。そこで、今回ご紹介するのが「UVR5」と「Audacity」という2つの強力なツールです。これらを使うことで、AIボイスチェンジャーのパフォーマンスを一段と高めることができます。それぞれのツールの使い方や効果的な活用方法を詳しく解説します。
UVR5とAudacityとは?
UVR5の説明と特徴
UVR5(Ultimate Vocal Remover 5)は、音源からボーカルや特定の楽器を取り除くことができるソフトウェアです。AIを活用して音声トラックを分離し、RVCによる音声加工の精度を向上させるのに役立ちます。特に、ノイズやバックグラウンドの音を取り除きたい場合に便利です。
UVR5の主な機能:
- ボーカルや楽器の抽出
- 高精度なノイズリダクション
- 音声トラックのクリーンアップ
Audacityの説明と特徴
Audacityは、無料で使えるオープンソースの音声編集ソフトです。シンプルなインターフェースと豊富な編集機能により、音質の微調整やエフェクトの追加が可能です。RVCで生成した音声を更に編集し、プロフェッショナルな仕上がりにするのに最適です。
Audacityの主な機能:
- ノイズリダクションとイコライザー
- エフェクトの追加(リバーブ、コンプレッサーなど)
- 音声のカット・トリム・ミキシング
UVR5とAudacityを使ったRVC音質向上の一連の流れ
1. UVR5で背景音楽などを除去し、音声をクリアにする
音源に背景音楽などがある場合は、先にUVR5を使います。背景音楽などを分離し、クリアな音声を得ることができます。
環境音(水の音、虫の音)などは完全に分離できない場合がありますが、それはAudacityで取り除きます。
手順:
- UVR5をインストールし、ソフトを起動します。
- 音声ファイルを読み込み、ボーカル分離モードを選択します。
- 分離後、ノイズが除去された音声トラックをエクスポートします。
- このクリーンな音声トラックをAudacityでさらに加工します。
2. Audacityでの無音部分のカットとエフェクト追加
RVCに取り込む前に、Audacityで音声の無音部分を切り詰めることは非常に重要です。無音部分が多いと、AIモデルの学習や音声変換の精度が低下する原因となります。特に無駄な無音部分を取り除くことで、AIモデルはより正確に音声の特性を捉えることができ、ボイスチェンジャーとしての効果も向上します。
手順:
- Audacityを開き、UVR5で処理した音声ファイルをインポートします。
- 音源を選択し、「エフェクト」メニューから「ノイズ除去と修復」機能を使用して余分なノイズを削除します。
- 音源を選択し、「エフェクト」メニューから「特殊」 「無音を切り詰める」機能を使用して無音部分を削除します。
- イコライザーを使用して音域を調整し、クリアでバランスの取れた音質にします。
- 最終的にエクスポートして、RVCで使用する音声ファイルとして保存します。
3. 高品質なベース音源の重要性
RVCのボイスチェンジャー効果を最大限に引き出すためには、ベースとなる音源の品質が非常に重要です。音声のクリアさや正確なトーンは、変換後の音声のクオリティに大きく影響します。たとえRVC自体が優れたアルゴリズムを持っていても、ベースとなる音声が不十分であれば、最終的な出力音声にノイズや歪みが生じることがあります。
ベース音源の重要なポイント:
- 音質のクリアさ:ノイズを除去し、余分な無音をカットしたクリーンな音源は、AIが学習しやすくなり、変換後の音声もより自然な仕上がりになります。
- トーンの安定性:一定の音量とトーンを持つ音源を使用することで、RVCは音声特性をより正確に捉え、変換時のブレを防ぐことができます。
- 録音環境の整備:背景ノイズが少なく、良好な録音環境で収録された音源は、RVCによる変換精度をさらに向上させます。
様々な場面で利用できるUVR5とAudacity
RVCの音源としてだけではなく、UVR5とAudacityを併用することで、さまざまな音声プロジェクトに応用することができます。例えば、YouTube動画のナレーション、ポッドキャストの音質向上、さらには音楽制作におけるボーカルトラックのクリーンアップなど、幅広い用途で役立ちます。この2つのツールをマスターして損はないです。
応用例:
- YouTubeナレーションの音質向上:UVR5でノイズを取り除き、Audacityで音声を調整することで、視聴者にとって聞きやすいクリアな音声に。
- ポッドキャストの音声編集:Audacityでのエフェクト追加により、ポッドキャストの音声がプロのような仕上がりに。
- 音楽制作:UVR5を使って楽器やボーカルを分離し、Audacityで調整することで、オリジナルの楽曲制作に。
UVR5の使い方と設定方法
UVR5のダウンロード
https://ultimatevocalremover.com/
公式サイトにアクセスします。「Download UVR」をクリックします。
githubのページに移動し、中段あたりに「Installations」からWindowsまたはMacOSの「Main Download Link」からダウンロードします。
UVR5の設定方法
URV5は楽曲のボーカル、ギター、ドラムなどを分離した個々のファイルにできることが通常の使い方ですが、ここで紹介する設定方法は音源データから音声以外に入っている背景音楽や環境音などから音声データのみを抽出する方法となります。

- Select Inputから対象の音源を選択します。
- Select Outputで保存先を選択します。
- CHOOSE PROCESS METHODで「Demus」を選択します。
- 先にCHOOSE DEMUCS MODELで「V4 htdemucs」を選択します。
- CHOOSE STEMで「Vocals」を選択します。
- チェックボックスの項目で「GPU Conversion」 「Vocals Only」にチェックを入れます。
- その他の設定はデフォルトで問題ありません。
- 「Start Processing」をクリックし、分離を開始します。分離が終了したらUVR5での作業は完成です。
Audacityの使い方と設定方法
https://www.audacityteam.org/
公式サイトにアクセスし、ダウンロードします。
Audacityでノイズを除去する方法
音源のインポート
Audacityを起動し「ファイル」から「開く」で音源を選択します。または対象の音源をドラック&ドロップします。
ノイズの除去
UVR5で取り切れなかった環境音などを除去していきます。
- 音声データに「水のせせらぎ」などの環境音がある場合は、まず音声のない環境音だけが入っている場所を見つけます。
- Windowsの場合、Ctrl + マウスホイールで対象の場所を拡大することができます。
- 削除したい環境音をトラックの上でドラッグします。

ノイズを記憶させます。
- メニューから「エフェクト」→「ノイズ除去と修復」→「ノイズを低減」を選択します。
- 「ノイズを低減」が表示されたら「ノイズプロファイルを取得」をクリックします。
- クリックすると「ノイズを低減」のウィンドウが閉じられます。

記憶させたノイズを削除
- トラックの全体を選択します。トラックの全体を選択するには音源の波形が表示されていない場所をクリックします。
- メニューから「エフェクト」→「ノイズ除去と修復」→「ノイズを低減」を選択します。
- ステップ2の項目を調節し、OKをクリックします。ステップ2での設定は除去対象となるノイズによるので決まった数値はありません。まずはデフォルトで試して除去が不十分だった場合「Ctrl + Z」で戻り、再度調節して除去していきます。

Audacityで無音部分を除去する方法
ノイズを除去した後で無音部分を切り詰めていきます。ノイズの除去の前に無音部分を切り詰めてしまうとノイズのみの場所を選択できなくなるのでこの作業はノイズを除去した後に行う必要があります。
- トラック全体を選択します。
- メニューから「エフェクト」→「特殊」→「無音を切り詰める」を選択します。
- しきい値を「-35」、継続時間と切り詰め時間を「0.3」に設定し、適用します。
- メニューの「ファイル」から「オーディオをエクスポート」で保存します。

しきい値
どこから「無音」とするかの設定
継続時間
無音の状態が何秒続いたら切り詰める対象にするかの設定。
切り詰め
無音と判定された箇所を実際に何秒切り詰めるかを設定します。そのため「継続時間」の設定時間を超えることはありません。
「継続時間」と「切り詰め時間」が同じ場合、無音と判定した時間をすべて切り詰めることになります。
切り詰め前

切り詰め後

RVCの音声品質を高めるためには、UVR5とAudacityを活用することが効果的です。特に、RVCでの音声変換のベースとなる音源の品質が、最終的な結果に大きく影響することを理解しておきましょう。UVR5でノイズを除去し、Audacityで無音部分のカットやエフェクトの調整を行うことで、プロフェッショナルな音声に仕上げることができます。これにより、AIボイスチェンジャーの可能性を最大限に引き出し、さまざまな音声プロジェクトで高品質な結果を得ることができます。ぜひ、これらのツールを試して、あなたのクリエイティブな活動に役立ててください。